収益改善のポイント: 固定費型・変動費型 収益構造


収益を改善する方法は、売上増加、粗利率向上(変動費 削減)、経費削減(固定費 削減)の3つがあります。 売上増加は全ての企業の収益を改善する可能性がありますが、 粗利率向上と経費削減は必ずしも全ての企業で効率的な改善に繋がるとは限りません。 ここではその違いを固定費型収益構造と変動費型収益構造に分けて考えます。

利益 = 売上 × - 経費

利益を売上に粗利率を掛け、経費を差し引いたものと考えると、 利益を上げる方法は、

  1. 売上増加

  2. 粗利率向上

  3. 経費削減

という3つの方法が考えられます。

それでは最も短期的に改善の効果が見込めるのはどの方法でしょうか。 まず、売上増加は、顧客があってこそ成立するものであり、 顧客に依存する度合いが高いと考えられますので、 短期的に収益の改善を行うことは難しい場合が多くあります。 売上を改善する方法には、営業職の活動量を改善、営業時間の長期化等があります。

粗利率向上と経費削減に関して、 どちらを優先すべきか、どちらの成果が出やすいかという視点で考えると、 収益構造には変動費型と固定費型があり、 変動費型では粗利率向上の効果が大きく、逆に固定費型では経費削減の効果が大きいことが分かります。 変動費とは仕入れや原材料費、外注費、支払手数料等、 売上に連動する費用、発注があって初めて発生する費用を言います。

「変動費とは?」・・・原材料や仕入れの費用に加えて、発注があってから発生する費用のこと。 同じ広告費でも成果報酬などで支払いができる場合には変動費となり、 それ以外の場合には固定費となります。


  • 変動費型

  • 固定費型

  • 折衷型

下記の例で見てみると、A社は粗利率が高く固定費が多く掛かっており、 B社は粗利率が低く固定費が少ないという収益構造になっています。

A社(固定費型) B社(変動費型)
売上 ¥100 ¥100
変動費率 25% 75%
固定費 ¥70 ¥20
利益 ¥5 ¥5

例えば変動費率が3%改善したとすると、 A社では利益に対して¥0.8(=¥100×(25%×3%))程度の効果しかありませんが、 B社では¥2.3(=¥100×(75%×3%))程度の効果しかありません。 一方、固定費を3%削減したとすると、A社では¥2.1、B社では¥0.6程度の効果があり、 A社での固定費削減の効果が大きいことが分かります。

変動費削減(3%)の効果

A社(固定費型) B社(変動費型)
売上 ¥100 ¥100
変動費率 24% 73%
固定費 ¥70 ¥20
利益 ¥5.8 ¥7.3

固定費削減(3%)の効果

A社(固定費型) B社(変動費型)
売上 ¥100 ¥100
変動費率 25% 75%
固定費 ¥68 ¥19
利益 ¥7.1 ¥5.6

結果として、変動費型収益構造を持つ会社では変動費率の改善(変動費 削減)、 固定費型収益構造を持つ会社では固定費削減が利益に対する影響が大きいと言えます。 考えてみると、額が大きい箇所を重点的に改善した方が良いという当たり前の結論です。

  • 変動費型 ・・・ 変動費率改善

  • 固定費型 ・・・ 固定費削減

業種別の収益構造

例えば卸売業は変動費型が多い業種です。仕入れに要する費用が大きいからです。 この場合は、仕入原価の低減や物流コストの低減など、変動費の削減を行うことで 利益率が向上することが多々あります。

IT産業はおそらく固定費型が多いと思われます。 人件費、家賃、機器類に要する費用が大きいからです。 この場合は業務改善を行い人件費を抑制したり、 リースや賃貸などを利用して資産の固定化を回避することが 利益確保につながります。 逆にITでも、仕事が発生した時にのみ費用が発生する外部パートナーを多く雇っている企業では、 変動費型になります。

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