■ マクドナルド苦戦
マクドナルドの業績不振が報道されている。 例の期限切れ鶏肉問題や異物混入への対応のまずさなどが引き金となり、 2015年3月の既存店売上は前年同月比で△29.3%となったとのこと、 9ヶ月連続で二桁のマイナスを計上している。
業績不振の直接の原因は主に品質不信と言われており、 様々な角度から分析が行われている。 但し、日本だけではなく米国本社のマクドナルドも苦戦が報じられている。 このことを勘案すれば、根本的な原因は他のところにあるのが見えてくる。
■ 経営陣が顧客の心を掴めず
まず短期的には、経営陣が現場から乖離してしまい、 既存顧客をないがしろにした為、顧客離れが起こっていると言える。 オシャレ化、カフェ化によってファミリー層を追い出し、 品質問題への不手際でファミリー層からの不信に拍車をかけた。 全店禁煙を実施し、サラリーマン層の利用も減った。 マーケティング戦略が完全に外れているのは、 経営陣が顧客の心を掴めなくなっている証左である。
■ ビジネスモデルの劣化
長期的には、全店統一仕様で大量仕入れによるコストダウンと、 それにより商品を安く売る戦略が、時代に合わなくなってきている。 赤と黄色を印象付けるイメージ戦略も今となっては騒々しく感じる。 デフレ時代のロスリーダー(低価格)戦略が新しい時代に不適合を起こし、 価格重視の仕入れが品質問題の遠因になったのではないかと感じられる。
企業衰退の一つの原因は、外部環境の変化によって既存の強みが弱みに変化してしまうことである。 即ち、環境(主に顧客の嗜好や技術)が変わってしまえば、 今までの強みが弱みに転化してしまう。 従来のビジネスモデル(収益構造・収益モデル)が成り立たなくなってしまうのである。 マクドナルドはまさにそんな状況にあるのではないか。 これが「ビジネスモデルの劣化」である。
■ そう言えば他の会社も
同じMでも Microsoftは、従来の収益源であったソフトウェアのパッケージ販売という ビジネスモデルからの脱却を目指し、好調な業績を維持している。 売上増加にはデバイス事業と企業向けクラウド事業が大きく影響し、 従来の収益構造が劣化する中で、新しい分野への投資を上手に収益に変えていることが分かる。
有名なPPMで考えてみる。PPMは市場占有率と市場成長率で製品の状況を4つに分類する分析手法である。 Microsoftの製品群を考えてみると、消費者向けのWindowsやOfficeが大きな伸びを期待できなくても、 法人向け事業が収益を支えている。今後、投資を進め、収益化を図らなければならないのは、 デバイス事業や検索、消費者向けOffice 365であることが明白である。 メリハリが効いている。 一方、マクドナルドは単一の業態に頼り、次の収益源が見えない。 現行の業態が更に占有率を下げてしまうのか、それとも占有率は上げられるのか、 それは現時点で不明であるが、将来的な市場の成長が期待できない中、 今後とも苦しい状況が続くことが読み取れる。
■ 新製品開発の大切さ
マーケティングの分野では製品ライフサイクル(Product Life Cycle)という考えがあり、 製品やサービスを、導入期、成長期、成熟期、衰退期に分けて考える。 主力製品・サービスが衰退期に入りキャッシュフローが苦しい中で新製品・サービスを開発するのは難しい。 余裕がない中で、新しい分野に投資するのは心理的にも苦しいものである。 投資は必ず成功するとは限らないので、主力製品・サービスが成熟期にある時に行い、 主力製品・サービスが衰退期に入った時に新製品・サービスがキャッシュフローをつくるようにする必要がある。
■ 永続的な企業になるには
皆さんの会社では主力製品・サービスとは別に新規事業・販路開拓に取り組んでいるだろうか。 新しい取り組みは必ずしも直ぐに実を結ぶ訳ではないですので、 短期的な結果が見えず面白くないかもしれない。 それでも、現在の状態が10年後、20年後も続くとは考えられず、 挑戦の放棄は企業の衰退を意味する。