リスケ/元本返済停止を行うには?:事例紹介 経営改善計画


リスケや元本返済停止を行うためには、今後の見通しを示したうえで、債権者(金融機関)と新しい返済条件について交渉を行う必要がある。我々の普段の生活でも、お金が返せなくなったとなれば、大丈夫なの? いくらなら返せるの? ということになるが、これと同じである。当然貸している方は、示された計画の確実性について厳しい目でチェックする。中小企業に対しては、国から計画策定への補助金があり、これを経営改善計画と呼ぶ。本稿ではこの経営改善計画の事例を紹介する。

 

1.経営改善計画の概要

本事例は中小企業庁の「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業」を活用したものである。当補助金は「経営改善」や「405事業」という呼び名もある。元々はリーマンショック後に制定された金融円滑化法の期間終了に対応する政策パッケージの1つであった。その時、405億円の予算がついたことから、405事業という名前で呼ばれることもある。

本事例に関しては、支援実施時の内容であり、最新の諸条件は異なっている場合がある。下記に参考URLを記載するので活用時には必ず改めて確認してほしい。

実施機関は中企庁であるが、当補助金の窓口は各都道府県の経営改善支援センターである。センターは中小企業再生支援協議会内に数名の人員で設置されており、東京都の場合、同協議会の委託先である東京商工会議所が運営を行っている。

当補助金は、返済額の低減、返済停止、新規融資等の金融支援を必要とする事業者を対象に、計画策定などの支援に2/3の補助をするものである。従って、対象事業者は金融機関から借り入れがあり金融支援を必要としている事業者ということになる。

  • 【参考】中企庁Webページ

http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/2013/0308KaizenKeikaku.html

本補助金を大幅に簡略化し、金融支援を必要としない事業者への支援を補助する「早期経営改善計画」がある。条件などは大幅に違うので、詳細については各自確認をお願いしたい。

 

2.事業者の概要

当社は幾つかの店舗を持つ買回り品の小売店である。当時、アルバイトを含めて45名ほどの人員が6店舗で働いていた。年商は凡そ15億円であった。

業界としても市場は縮小傾向で、いわゆる「若者の○○離れ」と言われる業界の一つである。また、買回り品という特性上、顧客は自分の嗜好にあったものを買い求める傾向があり、Web通販と親和性が高い一方、実店舗での販売は苦戦している状況である。

 

3.施策を活用した結果、成果

当社は都市銀行から信金まで計5社からの借り入れがあり、直近4年間は赤字基調であった。後で在庫変動を調べていた時に判明したことだが一部で調整があり、それが赤字幅を圧縮していた。直前期の実態赤字幅は約3%であった。

6年前に創業者から現社長に社長職が交代になった。創業者は代表権を残しているものの、経営の実務に関しては現社長に一任している状態である。創業者と社長に血縁関係はない。創業者が筆頭株主であり、社長は次席株主である。その他の株主は仕入れ先が多い。但し、筆頭株主の創業者であっても株式の過半数は持っていない。

今回は特に返済条件変更を目的とし、M&Aや債権放棄などを想定していなかったため、事業DD(事業評価)よりも改善提案に重きを置いた。

財務分析を行う中で、在庫が年々拡大しており確認したところ、一部、実態がない在庫があり、在庫増加の一部はこの所為であることが判明した。条件変更契約中で新たに借り入れを起こせないことを考えれば、在庫管理の徹底は欠かせない。在庫の肥大が資金繰りを圧迫するからである。そこで在庫管理を課題の一つに挙げた。

また、競争環境が厳しい中で短期の売上増は難しいと判断し、来店客により粗利高の高いものを積極的に紹介していくこととした。各店、各売り場担当者には商品ブランド別に販売計画数量を提出してもらい、それを集計し、計画数値とした。また、社長と一緒に全国の各店を回り、計画に対して理解が得られるよう努力した。この店舗回りでは店員の皆さんに SWOT をやってもらうなどの工夫を行った。

勿論、短期的な収益改善を実現する為に固定費の削減を行うこととした。内容としては、役員報酬、広告費などを実施した。複数の店舗がある小売店の場合、どうしても業績が回復しない場合、赤字店舗の閉店が避けられない。この時も赤字店舗を1店舗閉店した。

条件変更を行う際の計画数値の明文化されていない基準として以下の3点がある。

  • 3年以内の黒字化
  • 5年以内の債務超過解消
  • 10年以内の返済期間

この条件を満たすものを実抜計画と呼ぶ。本補助金に関して、この条件は必須ということではなく、これを満たしていると金融機関に理解を得やすいという程度のものである。但し、経営者には、この条件を満たしていないと金融機関の理解を得にくいことを説明した。

本施策を利用することにより、経営改善計画について各金融機関の同意が得られ、当社は返済猶予を得ることができた。但し、主要銀行は計画の確実な実行を強硬に求め、返済猶予は1年ではなく、3ヶ月毎の更新となった。3ヶ月毎の更新は現経営陣に対して強く改革を促す効果があった半面、経営陣がじっくり腰を据えて決断をする時間が乏しくなり、経営判断が遅れる側面もあった。

計画書には記載できなかったが、実は中小企業診断士専用従業員意識調査ツール「BasMos(https://basmos.jimdo.com/)」を使った調査では、特に正社員の会社に対する評価が他社平均に比べて極めて低いことが目立った。正社員の方が社長からの圧力を受けやすいためと仮説される。匿名質問票による自由記載欄には「とにかく社長に辞めてほしい。根源はそこです。」という文言もあった。社長は業績不振の原因を社員に転嫁する発言が繰り返しあり、残念ながら経営者としての心構えを学ぶ機会が充分になかったと推測される。

勿論、創業者には計画書に記載できない部分を含めて判断の為に必要な情報は全て提供している。

社長を交代させるとなると、社長の持ち株をどうするかという問題がある。買い取るのか、そのまま、株主として残す方法もある。買い取るのであれば、その資金はどこから捻出するのか、株主として残れば、法的には所有者の一人であり、当社と様々な関係が残ることとなる。

7月中旬頃に依頼があり、凡そ3ヶ月かけて計画策定及び金融機関との合意支援を行った。

 

4.リスケに向けた日程

良くある返済猶予の支援では、下記のような日程になる。

  • 相談受付当月
    • 当月払えるかどうかの検討
    • 止める場合には金融機関回り
    • 向こう3ヶ月間の資金繰り予測作成。返済停止だけでは資金繰りが回らない場合、税金・社会保険料の支払い猶予を検討
    • リスケ状態になったらできないことを急いでやる。(但し、偏波弁済などの法的責任を問われることもあるので注意する。)
  • 翌月
    • 計画策定、同時進行で金融機関回り。
    • 銀行に対する計画提示またはバンクミーティング
    • 補助金利用申請
  • 翌々月
    • 補助金利用申請受理、補助対象期間開始
    • 各金融機関内での検討、稟議
    • 返済条件変更契約、難しい場合には3ヶ月猶予

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