■ 離職率は平均で15.6%
厚生労働省の「平成25年雇用動向調査」によると、 前年の離職率は平均で15.6%、雇用形態別にみると正社員が12.4%、パートが24.7%であった。 つまり、正社員でも1年間で8人に1人は辞めていく計算となり、 24人の事業所であれば、3人は離職する。
産業別に集計すると以下の通りである。 上位のサービス関連の4業種が特に高く、それ以外であれば10人に1人程度の離職率となっている。
自分の会社と比べて高いだろうか、低いだろうか。 自社の方が高いとすれば、原因はなぜであろうか。
■ 事業承継時・経営者交代時の大量退職
完全に私見ではあるが、もしあなたが若くして事業を引き継いだ立場で、 大量離職に悩んでいるとすれば、これは止むを得ないと思う。 私が知っているある会社は、2代目から3代目に代わる際に、 従業員の2/3が退職したという。 あなたは新しいリーダーとして自分の理想を追求すべき立場にあり、 理想に賛同できない人間が離れていくのは避けられない。 もし、このことで思い悩んでいる人がいれば、 私はあなたを全面的に支持するので、悩みは捨ててしまって構わない。
■ リーダーの条件
経営哲学者であるP.ドラッカーは「リーダーに関する唯一の定義は、つき従う者がいるということである。」 (「未来企業」P.ドラッカー著、上田惇生編訳、ダイヤモンド社)と述べる。 つまり、リーダーは周りから支持され、リーダーとして認められているが故に、 リーダーたりうるのである。
同様に経営学者のC.バーナードは権限受容説を唱え、この説は一般に通説となっている。 上司から部下への命令は、部下が上司の命令を受け入れることによって成り立つ。 言い換えれば、上司の命令が成立するかは、上司ではなく部下が決定権をもっている。
勿論、会社法やその他の法規によると、経営者は株主から経営を委任されており、 従業員に対する指揮命令権があると考えられている。 お金を出した人からリーダーであることを委任されている経営者には、 従業員に対して命令する権利がある。
離職率が高いのは、経営者の指揮命令権とリーダーの条件の矛盾が発生していると考えられる。 要するに、法律的・社会的には権限を持っていても、 部下がそれを受け入れない限り、人は辞めていく。 会社では通常、採用の際には会社側に決定権がある。 しかし、その後、労働契約を継続するかは主に従業員に決定権がある。
まずはこのことを受け入れることが、離職者を減らす第1歩となる。
■ 実際の退職理由
実際の退職理由を考えてみると、やはり経営者や上司に関わることが多いと感じられるのではないだろうか。 下記のグラフはホンネの退職理由を調査した結果である。 「上司・経営者」「社長がワンマン」「社風」までを合計すると、 凡そ1/3の人が上司や経営者に何らかの不満があり、辞めている計算となる。
ちなみに同調査ではタテマエランキングも調査を行っているが、事由の1位はキャリアアップとなっている。
退職者数に悩みがあるなら、まずは実態を把握することをお勧めする。 上記の調査の通りだとすると、1/3は経営者・上司の態度が問題と考えられ、 結果は厳しいモノになるかもしれない。 但し、実態を把握せずして改善もまたないのである。 退職理由とは異なるが、従業員の意識を定量的に把握する「従業員意識調査」というものがある。 これは匿名のアンケートから従業員のモチベーションや意欲を調査・分析するものである。
事由別の具体的な対策については次回に記載する。