明日のためのその7: 行動に移す
前に「収益改善のポイント: 固定費型・変動費型 収益構造」という題で、財務直結型の収益改善の要点について書きました。売上が改善できれば一番良し、後は粗利率と固定費でどちらの改善が効果的かという話でした。今回は違った視点で考えてみます。
現状を改善して行く為には、次の4つの方法があるかと思います。 最初の項目が一番簡単で、最後の項目が一番難しくなります。
効率化する
契約を変える
行動を変える
意識を変える
まず、効率化を考えてみます。
業績推移を見ながら改善できそうなところに当りを付けたとします。簡単に考えてみると、その部分が効率化できれば業績も改善できそうです。企業活動の多くは人が働くことにより付加価値を生み出していると考えることができるからです。効率化にはECRSという考え方があります。これは製造業の工程改善において検討すべき方法論の順序を言ったものです。
排除(Eliminate)
無駄な事を止める。
統合(Combine)
まとめてしまう。
交換・順序変え(Rearrange)
順序を変える。
簡素化(Simplify)
簡単にする。
業績改善にせよ、業務改善にせよ、やめてしまうことが一番早いです。無駄な事はしない、これに尽きます。 例えば、営業担当者が日報を書くのに時間が掛かっているなら、日報を書かせることを止めてしまいます。 広告費が嵩んでいるなら、広告を止めてしまいます。 無駄な事を止めるだけですので、従業員からも感謝されます。 自社の顧客が喜ばないことは全て検討の対象にします。
重複した作業、似た作業を一つにまとめてしまいます。順序を変えて何とかします。
最後は簡素化です。単純化してしまいます。
契約を変更する。業務効率化を図っても目標に追いつかない場合は、契約の変更を考えます。 家賃の交渉、取引条件の変更交渉を始めます。相手も商売でやっているので、 経済的合理性に沿う話であれば可能性は高くなります。最後は従業員の給与ということになります。 裁判所も会社を潰してまで労働者の権利を守れとは言わないので、充分な努力をした後であれば、 実現可能性は高くなります。
従業員や他の利害関係者の行動を変える。従業員に対しては指揮命令権がありますので、 ある程度、行動を変えることは可能になります。但し、他人なので自分の思い通りに動いてくれません。 なるべく細かく何をするか、伝える必要があります。
意識を変える。やはりこれが一番難しい点です。常に考え方を伝え、当人の結論と自分の結論を比較して話していくと、うまく行くことが多いです。勿論、長い時間が掛かります。
行動を起こす場合にも難易度がある筈です。簡単にできる方法から検討した方が効率が良い場合が多いです。
明日のためのその8: 従業員の理解を得る
業績が不調であれば、従業員の待遇改善や給与向上にお金が回らず、従業員に大きな負担を掛けている筈です。ここで再建の為に更に従業員の方々に努力をお願いする訳ですから、やはり理解を得ることは大事です。
現状や今後の見通しを社員に説明し、理解を得る為には、資金繰りの現状、給与カットが資金繰りにもたらすメリット、経営再建の見通し等について分かりやすく話す必要があります。特に今まで経営について社内で話し合ったことがない会社では、従業員の考え方と経営者の考え方は大きな開きがあると思われます。
経営者は業績不調の影響で従業員の処遇や給与の改善ができないということを知っています。一方で従業員の方々はこれらの内容を知らない為、自分の仕事に目を向け、「頑張ってやっているのに」という考えを持つ場合が多いようです。これは考え方の違いというより、寧ろ接している情報の違いではないでしょうか。経営者は会社の資金面の実態を見ており、従業員は業務を見ています。従って、まずは日頃の業務の労をねぎらい、併せて会社の現状について説明する機会が必要かと思います。
業績説明会は、全社員を一堂に集めて行うより、部署毎等、少数の出席者で行う方がうまくゆく場合が多いです。業績不振が長く続いていれば、従業員の不満も溜まっていると思われます。その為、業績説明会で不満が噴出することが考えられます。ここはやはり、その声に丁寧に耳を傾ける必要があります。経営者として資金繰り、金融機関対応と、お忙しいところとは思いますが、経営者として従業員の声を聞く姿勢、現状を受け止める態度を示すことで会議の流れは大きく変わります。勿論、その上で今後、業績を改善していく策がなければなりません。業績説明会を少人数で行うのは、話を聞く姿勢を見せる為です。
説明会は最終的には従業員の方々に今できることに焦点を当ててもらうことを目的とします。現実の中でできることとできないことがあることをご理解いただき、まずはできることからやる以外にはないからです。
明日のためのその9: できる人間を探し、舞台を用意する
経営者で「ウチの社員は。。。」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、 私が知っている殆ど全ての会社では業務にも精通し、人間性も高い人材がいました。 それが「若い」とか、何らかの理由で他の人を引っ張る立場になっていない・・・ という場合が殆どです。 平時に在っては、社内のバランスや人材育成の流れに配慮することも総合的にみると必要になります。しかし、有事に在ってはやはりできる人間に頼らざるを得ません。 実際、私が業績不振企業のコンサルティングに行く際にも、 出来る人間は誰かを常に探しています。 それは社長や取締役であれば一番良いのですが、そうでない場合もあります。
条件は、1.実行力があること、2.社内に人望があることです。 まず、考えているばかりで行動しない人間はこうした役割は難しいです。 又、社内を動かす、社内の人間に動いてもらう必要があるので、人望が必要になります。 経営者は、余程酷いことをしていなければある程度のカリスマがあり、 社内の人間を動かすことができます。 しかし、従業員の一人に過ぎず、ましてや歳が若い場合等、 社内の人間が言うことを聞くかどうかは、その人間の人望にかかっています。 自分より年配の従業員も含めて、社内を動かすことができるかどうかが、 一つの大きな条件となります。
めぼしい人材がいたら、プロジェクト組織を作り、当人を長に据えましょう。 例えば「業績改善委員会」とかでしょうか。 その人には「委員長」になって貰いましょう。 社内でその人の発言権が高まるように正統性や「後ろ盾」を明確にするわけです。 直ぐに会議を開き、社内各部署に業績改善計画の提出をさせます。 出てきた業績改善計画を元に、委員長の意見を聞きながら、 会議の場で、できる、できないなら何故できないかを明確にしてしまい、 できることから即実行に移してもらうようにします。
経営者の視点と従業員の視点は大きく違いますが、 経営者として何故できないのかという判断の基準を常に見せることにより、 意識の違いを早期に埋めてしまうようにします。 できない理由が明確になれば、その理由を潰す方法も見つかるでしょう。 ここの事案に対して、素早く実行に移していきます。