経営者から始める収益改善の方法(5)<事業再生・経営改善の現場から>


明日のためのその13: 資産を圧縮し、資金繰りを改善する

企業を運営して行く為には運転資金が必要になります。例えば、仕入れ→販売→入金というサイクルになっている企業では、商品や原材料を一定量保持した上で販売を行い、企業間取引であれば入金まで少し時間があるということになるかと思います。商品や原材料は在庫と言われます。又、製造業で原材料から製品になるまでの間を仕掛りと呼びます。売上計上され、入金されていない分は売掛けになります。これらは企業運営に当たり、常に一定額が必要となります。

例えば、仕入れ値を80とし、売価を100とし、一か月に10単位売るとして、入金が1ヶ月後の場合、在庫が800、売掛が1000となります。損益としては毎月20の利益となりますが、在庫と売掛は常に一定金額が事業運営を続ける限り必要となります。このお金を運転資金と言います。この場合だと1800が運転資金になります。

運転資金は、何らかの資産と考えることができ、大きくなってくれば資金調達の必要性が生じてきます。又、金融機関からの借入金で資金調達を行えば、金利を払う必要があります。即ち、運転資金が膨らんでいけば、損益の面では黒字になっても、資金繰りの面では悪化していきます。最悪の場合は、運転資金の増加が黒字を上回ってしまい、黒字倒産と呼ばれる状況になってしまいます。

直近5年間の在庫の推移はどうでしょうか、売掛けの推移はどうでしょうか。もし、増加しているなら、ご商売の成長で意図的に増やしたものでしょうか。何となく増えてしまっているのでしたら、在庫を絞ったり、取引先に支払条件を変更してもらう必要があります。運転資金が少なくなれば、利益は同じでも銀行口座にお金が残っている状態になります。現預金が充分な額であれば、借入金を返済してしまって、金利負担を減少させることもできます。

売掛け金に関しては、相手があることですから、簡単に交渉できるかどうかは分かりません。取引先にとっても、支払い条件を短くすれば、その分の資金を新たに調達する必要があるからです。ただ、一般に比べて長すぎる支払条件で交渉できないのであれば、お取引を減らす方向で考えた方が良いかもしれません。貸倒れの危険性がないとしても、こちらも金利分は負担している訳ですから。

在庫の方はこちらの仕入れを調整する話なので、比較的取り組みやすい課題です。在庫が膨らんでいるのであれば、在庫の抑制を行い、運転資金を圧縮します。又、製造業等で仕掛りがある場合は、製造に係る時間を短くすると、仕掛りを圧縮することができます。

業績不振の企業では、まず在庫や売掛けの管理ができていないことが多いです。販売ももちろん大事ですが、まずは自分達で出来ることから資金繰りの改善を行います。

明日のためのその14: 金融支援を依頼する

行動計画(事業計画)と数値計画(財務計画)を策定したところで、金融支援の必要性について検討します。数値計画が出来てくれば、一般的には「経常利益+減価償却費」が返済できる額ということになります。この金額を簡易CFとも呼びます。勿論、資産売却等、現金支出・現金収入があればその分も勘案します。又、繰越欠損金がない場合には法人税も考慮する必要があるでしょう。この簡易CFと返済予定表を見比べてみて、返済が可能であるかを精査します。

事業再生は凡そ9割がリスケを行うという調査があります。リスケは元本の繰り延べ返済であり、支払猶予と言われることもあります。これより上の措置となってくると、債権放棄やDDS、利息の支払い猶予等があります。但し、この段階では金融機関として貸倒れの危険性が高くなってしまっており、自力再生が困難であることを鑑み、金融機関主導の再生という可能性もあります。シャープのようなイメージでしょうか。

リスケが行われ、返済が猶予されると、資金繰りは大幅に楽になります。毎月、大きな額が銀行への返済に充てられていたのが、少なる訳ですから。余った分はまず細ってしまった現預金の積み増しに充てます。これが充分な額になってきたら、後は計画通りに進めます。計画より業績が上振れした場合には元本を一部、返済してしまいます。元本を返済すれば、金利負担が減るからです。

金融機関に条件変更の依頼をする際には計画の提出が不可欠です。金融機関自体は、ほぼ計画でしか条件変更が可能かどうかの判断をすることができないからです。勿論、金融機関が企業を直接調査し、計画を作ることもありますが、大企業以外では余りこの例はないようです。金融機関へ提出する計画は堅めの計画となります。堅めというは、売上や粗利が劇的に改善する計画は余程の根拠がないと難しい判断され、経費削減策を中心に計画を立てるということになります。勿論、売上や粗利率が改善すれば、実際に経費を削減する必要はありません。金融機関向けに提出する計画は、最悪の場合も想定した計画と考えることもできます。

この金融機関向けの計画を「実抜計画」とか「合実計画」と言います。厳密には金融機関の債権者区分で「要管理先」を「要注意先」にするのを「実抜計画」、「破綻懸念先」を「要注意先」にするのを「合実計画」と呼ぶようです。いずれにせよ割と手堅い予測で5年以内の黒字化と債務超過解消、償還年数10年を目指す場合が多いようです。

計画が金融機関に承認され、条件変更が可能となったら、後は計画を実行に移すだけです。

明日のためのその15: 補助金を活用する

実は国の施策として、こうした経営計画策定、モニタリングを支援する枠組みがあります。どちらかといえば、業績が低迷している企業向けには経営改善計画策定支援事業というのがあります。この事業は、金融支援を前提に経営計画を策定、実施する企業向けに、専門家への謝金の2/3を支援するというものです。売上高毎に費用の上限が決まっており、売上高10億円未満でしたら、事業者の負担は最大66万円になります。

費用はともかく、実際に何をしてくれるのかというところですが、計画書を作ってくれます。といっても想像がつかない点が多いかと思います。知り合いの税理士さんや商工会議所、公的な経営相談窓口に行ってみて、実例を見てみるのが速いかと思います。安い金額で誰か手伝ってくれるなら、手伝ってもらわない理由もないです。

この補助金は金融支援を前提としていますので、金融機関からの借り入れがない場合には利用できません。又、計画の中に金融支援が必要ない場合、返済猶予、借り換え、新規融資が必要ない場合も利用できません。更に状況が厳しく、債権放棄などの踏み込んだ支援策が必要な場合には再生支援協議会等、別の枠組みを使った方が良い場合もあります。

業績が良くない企業では、組織の力が弱くなっていると思います。そんな時、外部の人間の視点を入れてみるのも良いのかもしれません。

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