減価償却費


減価償却とは (減価償却費の意味論)

減価償却費ってよく聞く言葉だが、理屈が分からない方も多いのではないのだろうか。正直に言うと実は私も苦手だった。計算方法はいろいろなサイトで紹介されているだが、ここでは意味論について分かりやすく説明してみようと思う。実は意味はそれほど難しくはないのだが、計算はかなり厄介で、そこが強調されていると思う。コンサルティングの際にも財務諸表では未償却分を確認する。本当に利益が出ているか確認する為である。

減価償却費の意味


  • 投資の年割を費用として計上 ・・・ P/L (損益計算書)に反映

  • 資産額を実態に近い値に修正 ・・・ B/S (貸借対照表)に反映

  • 投資の回収 ・・・ CF (キャッシュフロー)に反映


減価償却費を理論的にどんな意味があるか考えてみると、上記の3つになる。ここでは財務的な側面から見る為にP/L (損益計算書)、B/S (貸借対照表)、CF (キャッシュフロー)から考える。


投資の年割を費用として計上 ・・・ P/L (損益計算書)に反映



例えば、1200万円の設備投資を考えてみよう。初年度はCF (キャッシュフロー)が-1200万円となり、これが全額費用に計上されると設備投資した年は大幅に赤字になってしまう。これでは税金を計算したり、投資家が資料として使うには幅があり過ぎてしまう。そこで設備投資については投資額を年割で費用としてP/L (損益計算書)に載せるという決まりになっている。


年割と言ったが、何年で割るかを耐用年数と言う。耐用年数というと実際の運用上の寿命のような気がするが、そうではなく税法で決まっている。例えば、自動車であれば6年、ソフトウェアであれば5年となる。これは国税局の Web Siteで公開されている。
投資 1200万円、5年償却とすると、毎年、1200万÷5年=240万円の減価償却費が毎年P/L (損益計算書)に計上される。

資産額を実態に近い値に修正 ・・・ B/S (貸借対照表)に反映


1200万円の設備を買って、B/S (貸借対照表)に記載する。しかし、いつまでも1200万円の資産があるとすると、実際の売却価格から大きく離れてしまう。資産額が実態とかけ離れてしまい、不都合が大きい。そこでP/L (損益計算書)に計上された減価償却費は資産額から引くことにする。1年目は1200万-240万=960万円、2年目は960万-240万=720万円。4年目は240万円になる。
備忘価額」。減価償却費の耐用年数は実際に使える年数ではない。従って、耐用年数を超えても使える割合が高い。破棄しない場合は、1円を備忘価額として設定できる。「備忘」という通り、忘れないようにという趣旨である。従って上記の例で 5年目は 1円となる。


融資を行う金融機関から見た場合、資産と負債・資本が一致していることが大原則である。
貸借対照表の左右が一致していれば”理論的には”万が一会社を清算しても融資は全額返ってくることになる。
“理論的に”とは実際に資産の売却価額が簿価と一致するとは限らないからである。
但し、金融機関にとっては大きな一つの基準となる。
一方、資産が少ない状態を債務超過というが、減価償却費を計上していないと実態より資産が多く計上されていることになる。減価償却費を計上した場合に負債の方が大きくなってしまうと、やはり債務超過と判断される。

投資の回収 ・・・ CF (キャッシュフロー)に反映

減価償却費は費用として計上されているが、実際にお金が出て行ったのは初年度である。それより後の年は費用でありながら、支出は発生していない。従って、減価償却費の分はCF (キャッシュフロー)としては+になる。
従って上記の例でCF (キャッシュフロー)は、初年度 -1200万+240万=-960万円、次年度 +240万円。
この240万円は費用とみなされ、損金扱いとなる為、CFはあっても課税対象から外れることになる。

計算例

初年度 2年目 3年目 4年目 5年目
CF(キャッシュフロー) -1200万        
(P/L(損益計算書)) 240万 240万 240万 240万 240万
有形固定資産(B/S(貸借対照表)) 960万 720万 480万 240万 1円

売却時の計算

売却時には1.売却価額とB/S上の帳簿額の差異を特別損益としてP/Lに計上する。
帳簿額より売却価額が高い場合には特別利益の(固定)資産売却益となり、
逆に帳簿額より売却価額が低い場合には特別損失の(固定)資産売却損となる。
B/Sでは売却された資産がなくなる。
CFでは売却価額が+となる。

上記の例で3年目決算後、4年目の年初で400万円で売却した場合を考える。
購入価額から計上した減価償却費の総額を引いた帳簿価額は480万円となり、
480万-400万=80万円が特別損失の固定資産売却損としてP/L上に計上される。
B/S上では当該資産が消える。CFとしては売却価額の400万円が+となる。

期中での売却も同じ計算となるが、年初から売却月までの減価償却費を計上する必要がある。
例えば、4年3ヶ月で売却した場合には、3年目期末の帳簿価額の480万円から、
3ヶ月分の減価償却費 240万/年 × 1/12ヶ月 × 3ヶ月 = 60万円を追加で期末帳簿価額から引いて計算する。
従って、特別損失の有形固定資産売却益は、480万 - 60万円 - 400万円 = 20万円となる。


  • 3年目決算後4年目年初に400万円で売却

  • 特別損失: 80万円, 有形固定資産 480万→400万円

  • CF: +400万、有形固定資産 400万→0円



  • 3年目決算後4年目3ヶ月で売却

  • 有形固定資産 480万 - 60万 = 420万

  • 特別損失: 20万, 有形固定資産 420万 → 400万

  • CF: +400万、有形固定資産 400万→0

減価償却資産の範囲

固定資産のうち取得価額が10万円以上で耐用年数が1年以上のものが減価償却資産となる。
減価償却費は毎年価値が減っていく資産に対して計上するので、
土地や電話加入権は対象外となる。

次の資産が該当する

①建物 ②建物附属設備 ③構築物 ④機械及び装置 ⑤船舶 ⑥航空機
⑦車両運搬具 ⑧工具・器具及び備品 ⑨特許権等の無形減価償却資産 ⑩法令で定められた生物

任意償却(減価償却費は任意か)

見てきたとおり、減価償却は固定資産の資産価値の減少を年割り・月割り費用として計上し、
資産価値を減額していく仕組みである。実は減価償却は税法上は任意となっており、
任意償却と呼ばれる。

「税法上は」と書いたのは、世の中で一般的に言われる会計基準では
必ず計上することになっているからである。
但し、会計基準は全ての事業者に適用されるが、法律ではないので罰則はない。
上場会社では上場市場の会計基準で減価償却費の全額計上が義務付けられており、
減価償却費を計上しないと利益がその分多く見えることから、
粉飾決算と見なされる場合もある。
不適切な会計処理とされ、上場基準から逸脱してしまう。
又、金融機関も、投資の分を勘案した利益が出ているかどうか、
加えてより実際の売却価額に近い帳簿価額を記載しているかどうかを重視するので、
任意償却は喜ばれない。
一方で税法上は、法定耐用年数に基づいた減価償却額以下で、
企業が計上した減価償却を損金として認めるとなっている。
税務署としては、利益が大きく見え、税金をたくさん払ってくれることに異議はない。

減価償却はその分、企業としてはCF(キャッシュフロー)となっており、
黒字となっていれば、減価償却が終わった際には
新しい設備や資産が再び購入できるCFが発生している筈である。
つまり、経営の観点から見れば、来たるべき次の設備更新の備えができていることになる。
減価償却費を全額計上せずに黒字を計上したとしても、
短期的な事業上の影響はないが、長期的に見れば採算が取れていないことになる。
勿論、減価償却費を計上せずに黒字を出せば、税金は黒字として計算される。

コンサルティングの現場でも、減価償却は全額計上することをお勧めしている。
やはり、全額計上した上で利益がでていないと、長期的な企業の継続性と言うところに
問題があると考えるからだ。
ただ、信用が極めて重要で何が何でも黒字に見せかけなければならない業種や、
銀行の担当者がしっかり確認をしていないような小企業では、
減価償却費を計上せず、黒字に見せかける場合もある。
ここは状況をみて判断してほしい。

関連記事