社員のモチベーション向上(3): 労働環境・労働時間の改善


ホンネの離職原因で2番目に高いのが労働時間・労働環境への不満であった。 それでは労働時間や労働環境はどう改善すれば良いのだろうか。

■ 労働環境の改善

労働環境は職種によって改善できる範囲が限られている。 屋内の仕事、屋外の仕事、接客業、立ち仕事等、職種によって環境はある程度決まってしまう。

限界はあるが、まず現状の調査を行うことが優先である。 経営者や裁量権のある責任者が直接従業員と個別面談を持つ機会があるのであれば、 その際に意見・要望を聞き、できるできないを判断してしまう会社もある。 勿論、従業員から「ツラいので楽にしてほしい」とは言いにくいので、 この点は面談者から雰囲気を作る必要がある。 又、話を聞いておいて放置するのは、聞かないより悪影響が大きいと思われるため、 早めに解決できる人間に振り分けた方が良いであろう。

コンサルティングファームでは大抵従業員意識調査の仕組みを持っている。 中小企業診断士の協会では BasMosという仕組みがある。 (公財)日本生産性本部では、実習生受け入れを行うと、 従業員意識調査は無料で行ってくれる。 文末のリンクを参照してほしい。 従業員が多い場合、手間なく調べたい場合には活用を検討する余地があるだろう。

■ 労働時間の改善

業務改善は ECRS に基づき、まず不必要な業務を止めてしまうのが一番簡潔で迅速である。 ECRS は、廃止、結合、順序変更、簡素化の順序で、業務や作業の見直しを行う考え方である。 当然、廃止してしまうのが簡潔である。 但し、今までやっていた仕事を不要と判断するのは、従業員には難しい為、 ・管理職の主導で進める必要があるだろう。

ECRS

  • Eliminate (廃止。無くせないか):
    業務の整理し、不要なもの、重要度の低いモノはやめてしまう。
  • Combine (結合。一緒にできないか):
    業務をまとめて行い、時間を短縮する。
  • Rearrange (順序の変更。順番を変えられないか) 仕事や作業の手順を替えることで、効率化を図る。
  • Simplify (簡素化。単純化できないか?) より簡単な手順で、同じ成果を出す。

又、個々の従業員の労働時間には偏りが生じていることもある。 下記のグラフはある会社の総務部の業務時間調査を行った結果である。 ここでは正規の業務時間を年間 2000時間(8時間×250日)とし、 部署の総残業時間÷人員数で一人当たりの残業時間を算出した。 一方、各部署で行っている業務棚卸しを行い、必要な業務時間を「稼働時間」として比較した。

課ごとの残業時間

青い棒より緑色の棒が長い場合には、しなければならないことが与えられた時間より長いことを意味し、 定員を増加させることを検討する必要が生じる。 一方、正規労働時間より稼働時間が低いのにも関わらず残業が発生しているのは、 業務が特定の人に偏っていると考えられ、業務の平準化、他の人への仕事の移転が求められる。

例えば上記の例で、経営企画課は稼働時間が正規時間+残業時間を超過しており、 業務が全く回らない状態になっていると考えられる。 調整課については、必要な仕事が一人当り601時間しかないにも関わらず、 一人当たり 691時間の残業が発生しており、特定の人間に業務が偏っていると考えられ、 人員削減を行い、更に多忙な部署への異動が検討できる。

実際に稼働時間にどの程度の余裕が必要であるかは、業務の種類数により異なる。 一つのことに集中して業務を遂行する部署や職種では余裕はほぼ必要ないが、 様々な事を行わなければいけない場合にはある程度の余裕がないと、 あれもやってこれもやって整理する時間もないということになりかねない。

■ 労働時間改善のまとめ

以上のことから、労働時間改善の手順としては、

  1. 不要な業務をやめる
  2. 特定の人への偏りを解消
  3. 増員検討
となる。業務改善コンサルティングでも上記と同じ手順を踏む。

上記の例では、結局、半年間の猶予を置いて、1時間以上の残業禁止とした。 各部署で残業時間削減に対し真摯な取り組みが必要と思われ、 期限を区切ることで足並みをそろえた。

■ 参考

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