経営指標: 経営目標を立てる上で経営者が知っておくべき指標


経営目標を立てるに当たっては様々な経営指標が使われます。ROI、ROA、「経常利益率?%」というのを聞いたことがあるのではないでしょうか。どれを使えば良いのでしょうか?

実は経営指標は大まかに6種類があります。これ以外にも、顧客の生涯価値や市場占有率も経営目標として設定されることがあります。

  • 投資に対する利益を計るもの ・・・ ROI/ROA/PER
  • 絶対額 ・・・ 売上高、経常利益額、営業CF
  • 事業の効率を計るもの ・・・ 売上高経常利益率
  • 安全性を計るもの ・・・ 損益分岐点、安全余裕率
  • 生産性を計るもの ・・・ 労働生産性
  • 売上方程式の数値(KPI) ・・・ 単価、数量、粗利率、稼働率
  • 資金の効率を計るもの ・・・ 売掛債権回転期間、在庫回転日数
  • その他 ・・・ LTV、市場占有率
投資の効率を計る経営指標

まず、公開会社でよくつかわれるのは投資に対する利益を計る経営指標である。株主や投資家は出したお金に対して毎年どれぐらいの利益があるのかに関心がある。例えば初期投資が100万円で毎年10万円の利益がある投資であれば、10年で元を回収できる計算になる。ROIは10%である。

利益額は税引き後当期純利益や経常利益、税引後償却前利益などが使われる。税引き後当期純利益は財務諸表上の数値であり、他社との比較が容易である。また、経営分析などで会社全体の定常的な収益力を判定する場合には経常利益が使われる。特別損益は予測できないし、税金はある程度額が読めるので含めない考え方である。税引き後償却前利益は税金を引いた当期純利益に非現金支出の費用を足したものです。利益をよりCFに近づけて計算している。

  • 総資本経常利益率(ROA: Return On Assets)=経常利益÷総資本。
    経営分析の際に使われる代表的な指標。総資産をいかに有効活用して利益を上げているかを示す。 株主資本だけでなく、負債総額についても考慮した経営指標である。

  • ROI(Return On Investment)投下資本利益率または投資利益率。
    投資した資本に対して得られる利益の割合。 企業の事業や資産、設備の収益性、投資対効果を測る指標。 ITへの投資に関してもROIにて収益性を測る経営指標とされる。企業に限らず他の投資についても同じように使われる。投下資本を総資本と捉えるとROAと同じになる。

  • ROE(Return On Equity)株主資本利益率。純利益÷株主資本(%)
    株主資本をいかに有効活用して利益を上げているかを示す。 企業の成長性を図る株式指標として着目される。特に株主・投資家向けの指標。借入金のコストは支払利息として経費に計上されているとの考え方。

絶対額

経営指標として、効率性ではなく、絶対額を採用することもある。採用されるのは売上と利益が多い。売り上げは顧客から評価された金額である。この考え方は特に売り上げや利益に焦点を当てた経営を行う際に有効。

  • 売上高: 売上を伸ばしたい、市場占有率を高めたいと考える際に使われる。

  • 営業利益: 売上-原価-販売管理費で計算され、事業としてどれだけ利益が残ったかを示す値。

  • 経常利益: 営業利益-営業外費用+営業外収益で計算される。営業外費用には支払利息が含まれる。また、企業によっては本業と関係なく発生する雑収入が営業外収益として加算される。企業の「経常」的、恒常的な収益を示す指標。

  • : 経常利益-特別損失+特別利益-税金。税金を払った後の利益。特別利益・特別損失に関してはイレギュラーな値と考え、通常計画には盛り込まれない。(資産の売却などを検討している場合は計画する。)

  • 営業CF: 事業の結果として残ったお金。利益に加え、減価償却費、売掛債権、在庫、買掛債務などを考慮に入れた値。設備投資を行う計画がある場合や借入金の計画的な返済がある場合にはここを目標とする。FCF

事業の効率を計るもの

事業の効率をはかる指標として、売上高経常利益率や営業利益率がある。これは特に他社比較や経年変化を見る際に、効率性がどう変化しているかを見ることができる経営指標である。売上高経常利益率があがったということは、粗利率が改善したか、経費削減努力が実現したと考えることができ、その分、事業が効率化したと考えることができる。

  • 売上高経常利益率: 経常利益÷売上高。
    事業の効率化を計る指標。売上から原価と経費を減算した額。私見ではあるが、売り上げは顧客からの評価と考えられ、原価と経費は企業努力で抑制・効率化するものと考えることができるだろう。従って売上高経常利益率は企業努力の結果として成立する効率性と言えるかもしれない。

安全性を計るもの

 

  • 損益分岐点 = 固定費 ÷ 限界利益率。
    損益分岐点比率 = 損益分岐点 ÷ 実際売上高
    安全余裕率 = 100% – 損益分岐点比率
    損益分岐点とは利益が0になる売上高を算出した値であり、当然、売上高がこの値を下回れば赤字となる。安全余裕率は現在の売上高に対して赤字転落までにどの程度余裕があるかを示した値となる。

生産性を計るもの

 

  • 労働生産性: 粗利高÷従業者数。労働生産性は従業員一人当たりの粗利を言い、人の働きに注目した指標と言える。労働者の昇給原資を確保する為に、給与総額を増額しようとすると利益を圧迫する。しかし、従業員一人当たりの換算でより多くの粗利高を稼いでいれば、収益を圧迫することなく昇給ができる。そこで労働生産性を目標とする場合もある。主に従業員の意欲・責任感に訴える指標。

    平均給与労働生産性×
    従業員一人当りの給与従業員一人当りの粗利×粗利に対する人件費率


    労働生産性: 社員の給料を上げるには?

売上方程式の数値(KPI)

売上方程式は売上がどう作られているかを掛け算で表したもの。KPIという考え方も、財務的な結果につながる仕事をどれだけこなせたかということを数値として表すものであり、極めて似た概念である。平均利益率を掛ければ、粗利高も出すことができ、より広い用途で使える。社員各自の行動計画とも密接に連動しているため、社に向けとしても良く使われる。公開会社などでは売上が増加する根拠としても頻繁に発表される。

売上を増やす確実な方法: 売上方程式

また、これらの指標には数量や回数が入ってくるところが他の指標と大きく異なる。方程式の各要素は、「KPI:Key Performance Indicator」とか重要業績指標と呼ばれることもある。方程式の各要素は行動計画にも密接に関わっているため、内部向けの管理用指標と使われることも多い。収益構造(ビジネスモデル/収益モデル)を表した指標ともいえる。

  • 小売業の売上方程式: 粗利高= × 来店頻度 × 商品単価 × 買上点数 × 平均粗利率

  • サービス業の売上方程式: 粗利高 = 新規顧客 × 客単価 × 粗利率 + 既存客 × 客単価 × 来店頻度 × 粗利率。既存客数 = 新規顧客 × 定着率。新規獲得の為に広告費が必要で、ある広告に対して費用と予測獲得客数が分かっている場合には新規の粗利率の中に反映させてしまってもよい。

  • 商社・卸売り・B2BのIT等、営業担当者が訪問する形態の売上方程式: 訪問件数 ÷ 受注までの平均訪問回数 × 成約率 × 平均受注金額。

資金の効率を計るもの

売掛債権(納品後未入金)や在庫(商品、材料、資材など)は営業資産、買掛債務は営業負債とも呼ばれ、事業を行う中で自然に額が上下する。資金が売掛債権や在庫として存在している場合、それだけ運転資金が必要なことを意味しており、重要な管理指標としておいている企業も多い。

  • 売上債権回転日数=売上債権÷1日当たりの売上高。売上が何日で回収できるかを意味する。

  • 棚卸資産回転日数=÷一日当たりの仕入原価。在庫が何ヶ月で売れるか。

その他、市場占有率やLTV等も経営目標として使われることがある。

 

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