経営計画: 中期計画の立て方


ここでは経営計画(中期計画)の立て方を簡単に説明します。経営計画(中期計画)は、経営者の夢を実現する為の行動計画と、夢を財務的な数値として表したものです。つまり、これから何をして、どうなりたいかということを記述します。夢をカタチにすることで、投資家、金融機関、従業員、それから経営者自身に対して、何をしたいのかということを明確にするという意味があります。

経営計画は「事業計画」「融資申込書」「補助金申請書」等と良く似ています。 更に企業診断の成果物と同じです。 勿論、事業計画といった場合には事業面での施策が中心となり、 組織・人事の話は補完的な位置づけに留まりますし、 その他の計画書に関してもその用途に応じて重みづけは異なります。 融資や補助金の申し込みの場合は、雛形・書式がそれぞれ決まっていることが多いですが、 経営計画は自由に作ることができます。

前に経営VISIONは主に定性的にある期間の会社の目標を示し、 経営目標は主に定量的にある期間の会社の目標を示すと書きました。 企業経営において、定量的な目標というのは財務的な指標が中心となります。 財務指標以外では、市場占有率(シェア)が良く使われます。 それでは、それを実現する為に実際には何をしていくかというのが、経営計画や事業計画になります。

経営計画も経営理念や経営VISIONと同様に、経営者の考えを発表するものですので、 その目的は、経営者が自分自身に対しやるべきことを整理する為、従業員のモチベーションを高める為、 投資家に対し自社への投資を促す為、その他、金融機関に理解を得る為などの為となります。 経営者の方に依っては、中長期的な視点からすべきことが頭の中に完全に整理され、 24時間 365日、優先度の高い物から実施なさる場合もあり、 実際、創業者はそういった方が多くいらっしゃいます。 経営計画は組織がある程度大きくなり、組織のメンバーで目標を共有したり、 金融機関や株主に対してこれからやっていくことをきちんと説明する場合に必要となります。

経営幹部や中核社員に目的と行動を明らかにすることで、実際に劇的に仕事が振りやすくなると同時に、 仕事を受ける幹部、社員の側でも目的・目標が明らかなので仕事がやりやすくなったという声を聞きます。 幹部、社員が自分の気持ちを分かってくれない、自分の思い通り動いてくれないと思う社長さんは、 一度、経営目標と行動の伝え方を見直してみると良いかもしれません。

経営計画策定の手順は以下の通りになります。

経営計画
  1. 経営理念

    経営理念は経営者の仕事に対する個人的な哲学をカタチにしたものである。

  2. 経営Vision(目標)

    経営Visionは中期的な定性目標を言い、経営目標は定量目標を言うことが多い。

  3. 現状分析

    現状分析は自社外の分析と自社内の分析を行う。自社外の分析として、外部環境分析や業界動向があり、自社内の分析として、財務分析、自社の強み分析、従業員意識調査等がある。

  4. 戦略

    戦略とは方向性である。最もリスクが少なく、収益が大きい道を探す。

  5. 課題&施策

    Visionと現状の差異と、戦略から経営課題が抽出され、それを達成し、目標を実現する施策が必要となる。

  6. 行動計画

    どういう施策を行っていくか、事業計画を策定する。又、施策がどういう形で結実するか、計画を実施するに当たり財務的な問題が生じないかを計画を作って検証する。

勿論、上記の全てを記載しなければいけない訳ではありません。 飽く迄、受け取る側の納得感が重要です。 経営者自身や従業員に対して発表する計画であれば、 内容はやや甘めに社長の夢をみんなの夢となるように作成するのが良いかと思います。 逆に金融機関に融資をお願いする際にはかなり手堅い計画にしないと、 金融機関の担当者から理解を得るのは難しいかもしれません。

又、現状分析から実行、結果までは以下の通りとなります。

  1. 財務分析
  2. 財務的経営課題抽出
  3. 事業評価(市場環境、自社能力、経営戦略)
  4. 組織評価
  5. 重要経営課題抽出
  6. 経営目標策定
  7. 実行計画立案
  8. 実行体制確立
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ある程度の大きさの会社には組織をどう編成するか、現在の組織で計画を実行できるかという視点が必要になります。 明らかに人員以上にすべきことが多ければ、経営計画に現実感が伴いません。 人事制度という話題以外にも、プロジェクトを担当する役員等の人選のような内容も含まれます。

財務分析を起点にすると、その後の事業上&組織上の重要経営課題が財務的な結果に結びつきやすくなります。 又、財務自体は殆どの場合、目標と結果であって、多くの場合、それ自体には課題がありません。 但し、業績不振の企業では、資産売却や固定費圧縮等、財務的な外科手術が必要になる場合があり、 その際には財務上の施策というものも発生します。

経営計画の章立ては大まかに以下の内容を網羅します。 まず、やはり経営理念が大前提としてあり、会社の哲学や使命を記述します。 そして、前回の記事内容である経営戦略、経営課題を書いていきます。 創業や新規事業の際には収益構造やビジネスモデルについて記載します。 要は誰にサービスしてどうやってお金を受け取るかです。 後は、その具体的な実行計画、実行計画の結果として得られる財務上の業績、 最後に実行日程を書きます。

  1. 経営理念及びやりたい事
  2. 市場環境調査&経営戦略
  3. 経営課題抽出
  4. (収益構造)
  5. 行動計画
  6. 財務計画
  7. 日程

最後に、経営計画で一番重要なことは、経営者がこれで出来るという確信を持つことです。 これを除いて、おざなりの経営計画を立てても、仏作って魂入れずではないでしょうか。 今日は、経営計画について書きました。 経営計画の作り方が分かりやすく説明できたでしょうか。

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