戦略フレームワーク


外部環境分析、業界動向、競合調査、自社資源把握、実態把握と言った事実の収集を進める中で上がってくる事柄は多岐に渡る。この事柄を整理し戦略を立案する手法として「戦略フレームワーク」という各種の整理法・思考方法が使われることが多い。

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Cross SWOT は、まず収集された事柄を自社の強み&弱み、機会&脅威に整理し、それを掛けあわせて4つの事態を想定する手法である。

分析 答えるべき問い
強み x 機会 強みを活かして機会を勝ち取るための方策は?「強み」によって「機会」を最大限に活用するために取り組むべきことは何か?
強み x 脅威 強みを活かして脅威を機会に変える差別化とは?「強み」によって「脅威」による悪影響を回避するために取り組むべきことは何か?
弱み x 機会 弱みを補強して機会をつかむための施策とは?「弱み」によって「機会」を逃さないために取り組むべきことは何か?
弱み x 脅威 弱みから最悪のシナリをを避けるためには?「弱み」と「脅威」により最悪の結果となることを回避するために取り組むべきことは何か?

上記の例は食品卸売業の例である。 営業力があり、流行感度が高いことが流行食の定番化という状況にうまく一致し、 従来、収益を稼いできた。 営業力があり、流行感度が高くても、流行食の流行り廃りに乗り遅れれば、 後進者の立場となり、収益を稼ぐことはできない。 従って、経営判断をより一層迅速化することが課題となる。 一方、ベンチャー企業として業歴が浅く、若年層の従業員が多く、 社員意識が高くないこと、経験が浅いことを弱みとして抽出し、 流行食の定番化の波に対し、うまく乗って行く事も課題として抽出した。

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PPM(Product Portfolio Management)は複数の事業の中で今後注力していく分野を見極める分析手法である。複数の事業と書いたが、取引先別や商品別で考えることもできる。ボストン・コンサルティング・グループが1970年代に経営資源を最適に配分することを目的として開発した。図表の縦軸に市場成長率を取り、横軸に相対的マーケットシェア(市場占有率)を取って、個々の事業や商品・サービスが図のどこに位置するかを分析し、その結果を基に、各事業毎の方向性と経営資源配分のウェイト付けを行なう。

PPMの理論は、製品が生まれやがて古くなるという製品ライフサイクル(プロダクトライフサイクル)理論、及び市場占有率(マーケットシェア)が高まると収益を生みやすいという市場占有率理論を元にしている。即ち、

  • 市場占有率が高く、成長率も高い場合には収益も大きいが、一方で競合や新規参入も多く、多くの投資が必要となる。これを「花形」商品・サービスと呼ぶ。

  • また、占有率が高いが成長率が低いものは、投資を必要とせず高い収益性を産むが今後の伸びは期待できない。これを「金のなる木」と呼ぶ。

  • 占有率が低く成長率が高い場合には、大きな投資を行って占有率を高める必要があり、「問題児」と呼ぶ。

  • 占有率も低く成長率も低い場合には、収益性も低く今後の成長も期待できないことから「負け犬」と呼び、事業撤退を含めた抜本策を判断する必要がある。

上記の図は2015年3月期のMicrosoftの事業構成を示したものである。一般消費者向けのWindowsとOfficeはスマートフォンが増えてきたこともあり、デスクトップ市場の今後の成長が見込めない一方で、市場占有率は極めて高く、高収益となっている筈である。Microsoft Azureや企業向けOffice等の企業向けサービスは成長率が高い一方で、Azureは市場で圧倒的優位とは言えない為、今後も投資を行っていく必要がある。Xbox、Surface、携帯電話などの事業は市場は成長し続けている中で占有率は必ずしも高いとは言えず、今後、占有率を高め収益率を高めて行く事が課題である。

この分析から、Microsoftは広告宣伝費を投入し企業向けサービスの占有率を向上させながら、デバイスや個人向けCloud事業に開発費・広告費を投入していく必要があることが読み取れる。

5 Forces Model

5 forces Model

5Fs(5 Forces Model)は、競合、新規参入、代替品、調達、販売のそれぞれの外的環境において動向を整理し、脅威となりうる要素を抽出する分析手法である。マイケル・E・ポーターが1980年の著作「競争の戦略」の中で、業界内の競争に影響を与える5つの要因を指摘した。業界の力関係や特徴的構造を示すのに有効である。

  • 競合: 業界動向

    業界大手企業や直接の競合の動向をまとめる。一般的に大手企業は資本力をテコに設備投資、システム投資を行い、優位性を確保してくることが多い。上記の例では大手企業の動向を記載している。

  • 新規参入の脅威: 参入障壁

    参入障壁の低い業界は新規参入が容易であることを意味し、競争が激化しやすい。例えば、規模の経済性や、初期投資額、ブランド力、経験曲線、デファクトスタンダード、規制業種・免許業種等が参入障壁となりうる。

  • 代替製品またはサービスの脅威

    代替となりうる。商品・サービスについて分析する。代替品と成り得るものは様々に考えられる。例えば、音楽CDの代替品は携帯電話と考えることもできる。若年層がエンターテイメントとして携帯電話を利用することが多く、若年層の財布の中を一定と考えると代替品と考えられるからである。

  • 販売: バイヤ(直接顧客または最終顧客)の交渉力

    バイヤは、より高品質、低価格な商品を購入したいと考えている。上記の駐車場業では駐車場利用者を販売先と捉えている。駐車場は場所と価格以外はどこも同じとなりがちであり、販売先のロイヤルティは低い。

  • サプライヤ(供給業者)の交渉力

    調達先は、自社以外にもより高く大量に購入してくれる競合に供給を行いたいと考えている。例えば、人材業界では人材の確保・集客がやはり難しいと言われており、又、駐車場業では用地の確保が課題となっており、これらの業種では販売もさることながら、調達の確保もやはり大きな課題である。

SCM Model(Supply Chain Management Model)

Supply Chain Management Model

サプライ・チェーン・マネジメント(SCM: supply chain management)は日本語に直すと供給連鎖管理ともいわれる。商品・製品の企画から販売までの流れを分析するモデルである。主に、物流業、商社・卸売業等の中間業者、大規模流通チェーン等の全体像を整理する際に有効である。SCMモデルには、単一の企業の部分最適ではなく、流通チェーンの全体最適を考える必要があるという思想が反映している。又、製造業や商社・卸売の川上戦略、川下戦略を考える際にも効果を発揮する。

ある商品の誕生から販売には通常、複数の企業が関与する。上記の例では、1.商品企画、2.原材料調達、3.製造、4.物流、5.販売という5つの過程を想定し、それぞれに商流・物流・情報流という3つの視点で実態がどうなっているかを整理する表になっている。この5つの過程は整理する項目によって変化があっても良い。例えば、上記の例に消費、サービス、原材料生産等を加えることもできる。

  • 商流

    企業間の契約関係や支払・代金の受け取りといったお金の流れを考える。

  • 物流

    物理的なものの流れを考える。

  • 情報流

    企業間、事業所間、部署間の情報の流れを考える。

Positioning Map

positioning map

ポジショニングマップは製品・サービスの差別化戦略を検討する場合に用いられる。対象となる製品・サービスの特徴を表す属性から軸を2つ決め4つの象限を作り、そこに自社と競合の位置づけをプロットする。軸は、価格や、機能、効果等、顧客に評価されるものとする。ポジショニングマップを作成することで、自社の競合に対する立ち位置と今後進むべき方向性を明確にする。

上記の例はある自動車修理業を営む企業と、競合となりうる大手企業を比較したものである。左側の図は接客水準と費用を評価軸とし、右側は煩雑度と仕上がり品質を評価軸とした。左側の図では、費用も接客水準も高いディーラと、費用は安く接客水準が中程度の大手自動車整備チェーンを、自社と比較した。自社の差別化の方向性としては費用は引き続き中程度を維持しながら、接客水準を高めていくのが妥当である。右の図は、仕上がり品質と修理の煩雑度で自社と競合を評価した。自社は品質と煩雑度の面で競合に差別化でき、引き続き品質が高く、煩雑度の高い業務を行って行く事が今後の方向性として示唆される。左右の図から、自社は価格を維持しながら接客、品質、煩雑度の面で改善を図って行く必要性が読み取れる。勿論、これを実行する為には業務の効率化が一つの大きなテーマになる。


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