事業承継の概要
承継には、財産の承継、経営権の承継、リーダーシップの承継の3つがあります。 この内、財産と経営権はどちらかというと税務・法務の問題と言えます。
リーダーシップの承継の方は、どちらかというと組織内の人間関係や組織運営の問題です。 端的に言って、承継者の方が先代と同じように従業員に振る舞っても うまくいかない恐れがあります。 役員・従業員の方の心境は、新社長の「お手並み拝見」となっているのではないでしょうか。 では、どのようにすれば、新社長のリーダーシップを確立できるのでしょうか。
C.I.バーナードの理論に組織3原則(組織3要素)があります。 3つの要素とは共通目的(組織目的)・協働意志(貢献意欲)・コミュニケーションの3つの観点を言います。 まず、この3要素から新体制で何が必要かを洗い出します。 ある会社では、従業員の協働意識を育てる為に新社長就任に当たり、 経営計画発表会を開催しました。
新社長の部下への一つ接し方として、Situational Leadershipという理論があります。 この理論は、意欲も能力も低いメンバーに対しては、具体的に指示し、行動を促す教示(指導)型リーダーシップ、意欲は高いが能力は低いメンバーに対しては、こちらの考えを説明し、疑問に応えながら、共に仕事を行う伴走(コーチ)型リーダーシップ、意欲が低く能力は高いメンバーに対しては、自立性を促すため激励したり、相談をしながら考えを合わる相談(カウンセリング)型リーダーシップ、意欲も能力も高いメンバーに対しては、権限や責任を委譲する委任(エンパワメント)型リーダーシップが有効であると唱えています。
一方で、先代の勘に頼った経営判断ではなく、新社長の客観的判断が重要となります。 ここに将に経営計画&予実対策の必要性があります。 月次試算表・部門別採算・資金繰り等を新社長が適宜把握する為に、 仕組みを構築していきます。 又、新社長の発言力は一時的に低下しているので、カリスマ性に基づいた関係よりも、 客観的なデータに基づいた議論が適しています。 先代は「とにかく頑張れ!」で何とかなったかもしれませんが、 新社長は「客観的な財務の結果はこれこれしかじかだから、こういう対策が良いのではないか!」と言った方が 役員・従業員の方も受け入れやすいと思います。
事業承継に向けた組織作り、体制作りとして計画&予実差異への対策は、 あれば円滑な承継への確度が大幅に異なってきます。 新社長は決算まで結果が分からない状態で経営を行って行く事へ 不安はないのでしょうか。
良くあることですが、社長交代で従業員が大量に辞めてしまった場合は、 仕方ない事なので、私が新社長を励まします。 勿論、そうならないような事前の努力は必要ですが、 リーダーは理想を追い求める存在であり、 理想に共感できないメンバーが組織を離れてしまうのは止むを得ないことと考えます。
創業社長の特徴
引継ぎを行う現社長には様々な強みがあり、会社と事業を牽引してきた筈です。上記の図は創業社長の特徴を抽出したものです。事業承継では創業者の強みが新社長の弱みにならないよう留意する必要があります。