明日のためのその4: 組織の実態を把握する
前回、お話しした財務実態の把握に続いて、今回は組織実態の把握についてお話しします。 組織実態の把握は「従業員意識調査」や聞き取り調査によって行います。 従業員意識調査は質問票を各従業員に送り、匿名で回答してもらう調査です。 聞き取り調査はインタビューとも言い、調査者が各従業員と直接面談し、質問を行うものです。
組織を診断する観点は色々とありますが、まずは原則に従って考えてみます。 C.I.バーナードの理論に組織3原則(組織3要素)があります。 3つの要素とは共通目的(組織目的)・協働意志(貢献意欲)・コミュニケーション(意思疎通)の 3つの観点を言います。 従って、経営目標があるか、 組織に対して貢献する意欲があるか、ないとすれば問題は何か、 経営目標が伝わっているか、会議は機能しているか、 各人の結果を上司と話し合うことができているかという視点で見ます。 更にこれらを支える制度として、会議(意思決定)制度、賃金制度、人事考課(評価)制度、 教育(人材育成・能力開発)制度、抜擢(人材活用)制度があります。 これらについてもうまく機能しているかを調査します。
組織実態の把握で最も重要なことは、現在の組織で経営目標を実現できるか、 言い換えると経営計画の実行体制はあるかという点です。 どんなに精巧に作られた計画であっても、実行体制が整わなければ「絵に描いた餅」に過ぎません。
違う見方をしてみると、よく経営者は船長に例えられます。 素人考えではありますが、船長が船を正しく運行する為には、 目的地がハッキリしているか、現在地が明確になっているか、軌道修正が行えるか、 船員に対して何をすべきか伝わっているかということが必要になりそうです。 又、各船員が力を発揮した結果として正しい方向に進む船の設計が必要そうです。 これらがうまく噛み合った結果として、事業の結果もついてきます。
明日のためのその5: どのぐらい改善すれば良いかを知る
どのぐらい頑張って改善をしなければならないかを知る為に、 現状の数字からどのぐらい利益を出さなければいけないかを計算してみます。
売上 |
×粗利率 |
-経費 |
—————————- |
利益 |
+減価償却費 |
-売掛増加 |
-在庫増加 |
—————————- |
CF |
-借入金返済 |
—————————- |
現預金減少 |
利益は、売上×粗利率-経費として計算されますので、 現状の売上、粗利率、経費からどれをどのぐらい改善すれば黒字になるかが分かります。 勿論、売上や粗利率はお客さんあってのことですので、簡単には上げられません。 粗利=売上×粗利率が経費より下回ると赤字となり、会社からお金が流出していることになります。
但し、減価償却費や引当金等は実際の支出を伴っていませんので、 CF(キャッシュフロー)を計算する際には加算します。 売掛金が増えてしまったり、在庫が増えてしまったりするとその分CFが流出しますので、 減算します。 売掛金と在庫は減少すれば、減少分が+となります。計算してみるとCF(キャッシュフロー)が出てきます。
CFから借入金返済を引くと、現預金増減額が計算できます。 もし現預金増減額がマイナスとなり、現預金額を上回ると資金ショート状態になっています。 何かの手を打つ必要があります。 例えば、資産の売却を行えば、CFに加算されますので、その分借入金返済を行うことができます。
業績改善を行う際には、大まかな数字で良いので、収支を計算してみると、 今後、何をどれぐらい改善すればよいのかが見えてきます。
明日のためのその6: 現状を受け入れる
財務評価も組織評価も事業を行った結果であると考えることができます。 結果が芳しくなければ色々理由を探したくなるものです。 この文を読んでいる経営者の方はそんなことはないと思うのですが、 世の中には業績不振の原因をついつい環境や業界、従業員に探してしまう人がいます。
原因を自分以外の外部に求めれば、途端に改善は難しくなります。 「ウチの業界は特殊だから・・・」「優秀な人材がいない・・・」と思えば思うほど、 再建は遠くなるとお考えください。 誰にとっても自分以外の誰か・何かを変えるのは極めて難しいからです。 勿論、環境の変化や業界の特殊性、人材の不足が間違った認識であるということではありません。 コンサルティングを行う現場でも、それは往々にして間違っていない場合が多くあります。 ただ、そこに思考を持って行ってしまうと、今すぐにできることに目が向かなくなってしまいます。 経営者が自分が変わることで会社全体を変えると考えることが、 短期的な改善に結びつきます。 自分の行動を変えることが、環境、業界を変えたり、従業員を変えたりするより遥に簡単で迅速だからです。
同じ業界で全ての会社が儲かっていないのであれば、 業界全体の問題と捉えることができるかもしれません。 しかし殆どの場合は自社が儲かっていないのであって、他に儲かっている会社がない訳ではありません。 儲かっている会社も結局何かの経営判断を行った結果として儲かっているのであり、 経営判断の差が収益力の差になっていると考えることができます。
経営者の仕事は、儲かる仕組みである収益構造(ビジネスモデル)の構築、 社員が協働する仕組み(組織)の構築、投資判断の3つと考えられます。 まずは現状を受け入れ、自分が上記3つについて何ができて、どんな結果を齎せるのか、 まずはそこから考え始めるのが近道です。